こんにちは。あいです。
この記事では、一級建築士学科試験の法規科目「防火区画」について解説します。
ある程度の規模を設計しようとすると必ず出てくる防火区画ですが、設計製図試験でも必要な知識になるのでちゃんと勉強しておきたい項目です。
※本記事は一級建築士試験で通用するレベルの必要最低限の情報をまとめていますので、あらかじめご了承ください。
防火区画について(建築基準法施行令112条)
防火区画は主に建築基準法施行令112条によって定められています。
防火区画には面積区画、高層区画、たて穴区画、異種用途区画の4種類がありますので、それぞれについて整理します。
面積区画(令112条1~6項)
①1,500㎡区画(令112条1項)
区画対象 | 耐火建築物、任意の準耐火建築物(令112条1項) |
区画方法 | 1時間準耐火構造の床・壁、特定防火設備(令112条1項) |
緩和規定 | スプリンクラーを設けた場合、床面積の1/2を除く。(令112条1項) |
免除規定 | 劇場、映画館、園芸場、観覧場、公会堂または集会場の客席、体育館、工場(令112条1項一号) 昇降路の部分で1時間準耐火構造の床・壁、特定防火設備で区画されたもの(令112条1項二号) |
備考 | 特定防火設備の作動方法:煙感又は熱感(令112条19項一号) |
②500㎡区画(令112条4項)
区画対象 | 特殊建築物の準耐火建築物、防火地域制限の準耐火建築物(令112条4項) |
区画方法 | 1時間準耐火構造の床・壁、特定防火設備(令112条4項) |
緩和規定 | スプリンクラーを設けた場合、床面積の1/2を除く。(令112条1項) |
免除規定 | 体育館もしくは工場で、天井及び壁の室内に面する部分の仕上げを 準不燃材料とした場合(令112条6項) |
備考 | 特定防火設備の作動方法:煙感又は熱感(令112条19項一号) |
③1,000㎡区画(令112条5項)
区画対象 | 特殊建築物の準耐火建築物、防火地域制限の準耐火建築物(令112条5項) |
区画方法 | 1時間準耐火構造の床・壁、特定防火設備(令112条5項) |
緩和規定 | スプリンクラーを設けた場合、床面積の1/2を除く。(令112条1項) |
免除規定 | 体育館もしくは工場で、天井及び壁の室内に面する部分の仕上げを 準不燃材料とした場合(令112条6項) |
備考 | 特定防火設備の作動方法:煙感又は熱感(令112条19項一号) |
※500㎡区画と1,000㎡区画は厳密には区画対象が異なりますが、一級建築士の学科試験レベルではそこまで問われません。勉強時間に余裕がある方は調べてみてください。
高層区画(令112条7~10項)
区画対象 | 地上11階以上の部分でその階の床面積の合計が100㎡を超える部分(令112条7項) |
区画方法 | 100㎡以内ごとに耐火構造の床・壁、特定防火設備。(令112条7項) |
緩和規定 | スプリンクラーを設けた場合、床面積の1/2を除く。(令112条1項) 仕上げを準不燃材料かつその下地を準不燃材料:200㎡以内ごとの区画で良い。(112条8項) 仕上げを不燃材料かつその下地を不燃材料:500㎡以内ごとの区画で良い。(令112条9項) |
備考 | 特定防火設備の作動方法:煙感又は熱感(令112条19項一号) |
たて穴区画(令112条11~15項)
区画対象 | 主要構造部が準耐火構造以上で,かつ,地階または3階以上の階に居室を有する建物における 吹抜け、階段、昇降路、ダクトスペース、メゾネット部分等の部分(令112条11項) |
区画方法 | 準耐火構造以上の床・壁、防火設備(令112条11項) |
緩和規定 | スプリンクラーを設けた場合、床面積の1/2を除く。(令112条1項) |
免除規定 | 階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅(令112条11項二号) 共同住宅の住戸のうちその階数が3以下かつ床面積の合計が200㎡以内であるもの (令112条11項二号) |
備考 | 特定防火設備の作動方法:煙感(令112条19項二号) 特定防火設備の仕様:遮煙性能を有するもの(令112条19項二号) |
異種用途区画(令112条18項)
区画対象 | 法27条に該当する特殊建築物の場合に、その部分とその他の部分。(令112条18項) |
区画方法 | 1時間準耐火構造の床・壁、特定防火設備(令112条18項) |
緩和規定 | スプリンクラーを設けた場合、床面積の1/2を除く。(令112条1項) |
備考 | 特定防火設備の作動方法:煙感(令112条19項二号) 特定防火設備の仕様:遮煙性能を有するもの(令112条19項二号) |
防火区画の関連条文
この章では、防火区画に直接関係する項目や防火区画に似たような考え方の項目について整理します。
防火設備(法2条九の二ロ、令109条、令112条19項)
定義 | 防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備(令109条) 通常の火災による加熱開始後20分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないもの(令109条の2) |
特定防火設備(令112条1項、令112条19項)
定義 | 防火設備の内、通常の火災による加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないもの 又は国土交通大臣の認定を受けたもの(令112条1項) |
防火区画を貫通する風道に設ける防火設備(令112条20,21項)
規定 | 給水管、配電管その他の管が防火区画を貫通する場合:当該管と防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋める(令112条20項) 風道が「準耐火構造の防火区画(令112条20項条文中に規定)」を貫通する場合、貫通する部分又はこれに近接する部分に、煙感又は熱感(令112条21項一号)、かつ、閉鎖した場合遮煙性能を有する(令112条21項二号)特定防火設備を設ける(令112条21項) |
防火区画を配管が通るときには不燃材料を詰めたり特定防火設備を設けたりします。
防火区画に接する外壁(スパンドレル)(令112条16項)
区画対象 | 防火区画としての壁・床・防火設備等に接する外壁 |
区画方法 | 接している部分を含み幅90cm以上の部分を準耐火構造 |
免除規定 | 外壁面から50cm以上突出した準耐火構造のひさし等で防火上有効に遮られているもの |
防火区画が建物内部で火が回らないようにするためのものであるのに対して、スパンドレルは開口部から外を通って隣の部屋の開口部に火が回らないようにするイメージです。
防火壁(法26条、令113条)
区画対象 | 延べ面積が1,000㎡を超える建物 |
区画方法 | 1,000㎡以内ごとに防火壁(耐火構造)で区画(令113条) 耐火構造とすること。(令113条一号) 防火壁に設ける開口部の幅及び高さは、それぞれ2.5m以下とし、かつ、これに特定防火設備(令112条18項第一号に規定する構造)であるものを設けること。(令113条第四号) |
免除規定 | 耐火建築物、準耐火建築物(法26条1項一号) |
いろいろと書いていていまいち理解しにくい防火壁ですが、基本的に木造等の建築物で使用される仕様です。
木造で1,000㎡を超える建物が問題に出題されたときには気にする程度で良いと思います。
界壁、間仕切壁、隔壁(令114条)
界壁 | 共同住宅の界壁:準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめる(令114条1項) |
間仕切壁 | 学校、病院、児童福祉施設等:防火上主要な間仕切り壁を準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめる(令114条2項) |
隔壁 | 小屋組が木造かつ建築面積が300㎡を超える建築物:けた行間隔12m以内ごとに小屋裏に準耐火構造の間仕切壁を設ける(令114条3項) 延べ面積がそれぞれ200㎡を超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で,その小屋組が木造であり、かつ、けた行が4mを超えるもの:小屋裏に準耐火構造の隔壁(令114条4項) 換気等の設備の風道が学校等の防火上主要な間仕切壁(令114条2項に該当)を貫通する場合:当該風道の当該間仕切壁を貫通する部分又はこれに近接する部分に、防火設備(45分耐火)を設ける(令114条5項) |
界壁については共同住宅、学校、病院、児童福祉施設、小屋組みが木造といった条件が出たときに確認する必要があります。
防区無窓(法35条の3)
区画対象 | 面積の合計が当該居室の床面積の1/20を超える開口部を有しない居室(令111条) |
区画方法 | 主要構造部を耐火構造または不燃材料とする(35条の3) |
過去問題
実際に問題を解いて理解を深めましょう。
・面積区画
『問題文』
準防火地域内の準耐火建築物である延べ面積1,200㎡の地上2階建の体育館で、天井及び壁の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものは、防火区画しなくてもよい。(平成13年)
『解答・解説』
→〇
令112条4,5項より、準防火地域内の準耐火建築物は500㎡区画と1,000㎡区画が必要となる。
しかし、令112条6項より、準不燃仕上げの体育館は500㎡区画と1,000㎡区画が免除される。
・高層区画
『問題文』
準防火地域内の準耐火建築物である延べ面積1,200㎡の地上2階建の体育館で、天井及び壁の室内に面する15階建の事務所(主要構造部を耐火構造としたもの)の15階の部分で、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったものは、一定の場合を除き、床面積500㎡以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。(平成14年)
『解答・解説』
→〇
令112条7項より、地上11階以上では100㎡以内ごとに耐火構造の床・壁、特定防火設備が必要となる。
しかし、令112条9項より、仕上げを不燃材料かつその下地を不燃材料とした場合は500㎡以内ごとの区画で良い。
・たて穴区画
『問題文』
3階に居室を有するホテルで、主要構造部を準耐火構造としたものにおいて、ダクトスペースの部分とその他の部分とは、不燃材料で造られた床若しくは壁又は所定の防火設備で区画しなければならない。(平成21年)
『解答・解説』
→×
令112条11項より、たて穴区画は不燃材料ではなく準耐火構造。
・異種用途区画
『問題文』
1階を自動車車庫( 当該用途に供する部分の床面積の合計が200m2 )とし、2階以上の部分を事務所とする地上5階建ての建築物においては、当該自動車車庫部分と事務所部分とを防火区画しなければならない。(平成28年)
『解答・解説』
→〇
問題文の自動車車庫は「別表1」(い)欄(六)項より特殊建築物とわかる。
よって、令112条18項より、事務所の部分と自動車車庫の部分とを防火区画しなければならない。
・防火区画を貫通する風道に設ける防火設備
『問題文』
換気設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合において、当該風道に設置すべき特定防火設備については、火災により煙が発生した場合に手動により閉鎖することができるものとしなければならない。(平成22年)
『解答・解説』
→×
令112条21項より、煙感又は熱感としなければならない。
・防火区画に接する外壁(スパンドレル)
『問題文』
防火区画に接する外壁については、外壁面から50㎝以上突出した準耐火構造のひさし等で防火上有効に遮られている場合においては、当該外壁の所定の部分を準耐火構造とする要件が緩和される。(平成20年)
『解答・解説』
→〇
令112条16項より、免除規定を用いることが可能。
・防火壁
『問題文』
延べ面積1,500㎡、地上3階建ての患者の収容施設がない診療所において、耐火建築物及び準耐火建築物に該当しない木造の建築物としたので、準耐火構造の壁によって床面積の合計750㎡ごとに区画した。(平成26年)
『解答・解説』
→×
令113条より、防火壁は耐火構造としなければならない。
※1,000㎡以内で区画すれば良いので、750㎡ごとに区画することは適切
・防区無窓
『問題文』
事務所の事務室において、窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積の合計が床面積の1/20未満の場合には、事務室を区画する主要構造部を耐火構造とし、または不燃材料で造らなければならない。(平成17年)
『解答・解説』
→〇
法35条の3、令111条に書いてある通り。
・界壁・間仕切壁・隔壁
『問題文』
学校の防火上主要な間仕切壁を換気の設備の風道が貫通する場合においては、当該風道の当該間仕切壁を貫通する部分又はこれに近接する部分に、一定の性能を有する特定防火設備を設けなければならない。(平成14年)
『解答・解説』
→×
令114条5項より、特定防火設備ではなく防火設備(45分耐火)でよい。
防火区画のまとめ
本記事では、一級建築士学科試験の法規科目「防火区画」について解説しました。
法規の中でも特に理解するのが難しい項目なので、根気よく何度も勉強して理解していきましょう。
それでは。